Autowareエンジニア座談会【前編】

今回は、ティアフォーのコアともいえるオープンソース自動運転ソフトウェアの「Autoware」について、エンジニア同士で語り合いました。

黎明期から携わるメンバー、最近入社したメンバーたちが、仕事や職場環境の魅力、今後の目標、一緒に働きたい人物像などを語ります。

今回の「前編」では、Autowareの成長のプロセスを振り返りつつ、各メンバーの入社前後の思いを語りました。

座談会メンバー

ファシリテーター

伊勢 岳起(Ise Gakuki) | CTO Office

2019年7月、中途入社。入社後、国内外の開発やデモンストレーション案件でプロジェクトマネージャーを担当。現在はCTO室で開発組織の人事関連業務に従事。

参加メンバー

満留 諒介(Mitsudome Ryohsuke) | Architect

2018年10月、中途入社。ティアフォー入社後はAutowareの地図モジュールやPlanningモジュールの開発を担当。現在はSoftware ArchitectとしてAutowareのインタフェース設計を担当しつつ、Autoware FoundationのTechnical Steering CommitteeのChairとしても活動。

三宅 健司(Miyake Kenji) | CTO Office

2019年8月、中途入社。自動車部品メーカーで約5年間、自動運転システムの研究開発に従事。ティアフォーに入社後は、Autowareの工場内自動搬送システムへのインテグレーションや、ソフトウェアの品質向上を担当。現在はアーキテクトとして、開発プロセスやオープンソースコミュニティ運営の効率化を担当。

Maxime Clement | Planning/Control Team

2021年2月、中途入社。前職ではロボティクススタートアップで自動運転ソフトウェアの開発に携わる。ティアフォーには Planning/Control のリサーチエンジニアとして入社。オープンソースコミュニティを通じたAutoware開発と動的障害物に対する振る舞い改善といったPlanningの新機能開発を担当。

三浦 偉志(Miura Takeshi) | System Integration Team

大手自動車メーカーで1年間、自動運転の開発を経験後、2021年4月に入社。入社後は、工場内自動搬送システムや低速自動運転バスへのAutowareのインテグレーション業務や経路計画の機能開発を担当。現在はSystem Integration Teamとして、乗用車型自動運転車へのAutowareのインテグレーションを担当。

太田 慧(Ota Satoshi) | Planning/Control Team

2021年4月、新卒入社。学生時代は航空宇宙工学を専攻し、ドローンのPlanningに関する研究に従事するかたわら、スタートアップ企業にてトンネル点検用ドローンの開発を経験。ティアフォーでは自動運転バスへのAutowareのインテグレーションを担当した後、Planning/Control Team へ異動。現在はAutowareのPlanning Moduleの開発を行う。

籔内 健人 (Yabuuchi Kento) | Localization Team

大学院時代は加藤CTOの研究室に所属して自己位置推定の研究に取り組みつつ、グループ会社であるMAP IVにてパートタイムエンジニアとして働いた。2022年4月にティアフォーへ新卒入社。高専在学時から大学学部までの数年間に渡りNHKロボットコンテストに参加。

毎日、黄色い服を着ている。

李 尭希(Ri Yoshi) | Sensing/Perception Team

2022年8月、中途入社

電気系工学専攻を卒業後、大手重工業メーカーにて自律飛行ドローンの研究開発などを2年経験、2022年8月に入社。
ティアフォーではSensing/Perceptionグループにて車両や歩行者などの物体検知とその追跡の機能向上に従事。

「ティアフォーのAutoware」から「全ての人のAutoware」へ

伊勢 まず、Autowareのこれまでの歩みを振り返ってみたいと思います。

入社順にお話を伺っていきますので、当時のAutowareやティアフォーの状況や、担当していた業務について教えてください。

今日の参加メンバーの中で一番社歴が長いのが満留さんですよね。

満留 2018年10月に入社しました。当時は東京大学内にある「アントレプレナープラザ」という施設にオフィスがあり、エンジニアは約20人体制。「研究室」のような雰囲気でした。

名古屋大学で開発された「Autoware.AI」をベースに開発し、新しい機能を実証実験で試しつつ上乗せしていました。継ぎ足し継ぎ足しで「秘伝のソース」なんて呼んでいましたね(笑)。

日本で初めて一般道での自動運転実験が許可された日(2015年)

自作ロボットカーでモリコロパークを爽快にドライブしてみた日(2019年)

当時はティアフォーしかAutowareの使い方を知らない状態でしたが「The Autoware Foundation*」を設立し、Autowareがティアフォーのものだけではなくなったのは大きな変化でした。オープンソースとして大きなステップとなり、それまではやや緩かった社内に「真面目にやろう」みたいな空気が生まれましたね。

*自動運転OSの業界標準を目指す世界初の国際業界団体

伊勢 満留さんの入社から1年後くらい、雰囲気が変わったころに入社されたのが三宅さんですね。ティアフォーとはどのように出会ったんですか?

三宅 前職で自動運転を手がけていたので、名古屋大からAutowareがオープンソースで出たことは認識していて、サンプルを動かしたことはありました。当時はそこまで強い関心はなかったのですが、「The Autoware Foundation」が設立された頃、ティアフォー社員のテックブログでの露出が増えたり、ROSCon JPに出展していたりして、「面白そうな人たちがいるな」と思って応募してみました。選考を受けて内定が出た頃には大きな出資が決まったりして、勢いがあると感じていました。

入社直後はAutoware.AIのメンテンナンスなどをしていたんですが、しばらくすると自動運転タクシーや工場内自動搬送などの様々なユースケースに対応するために「アーキテクチャを見直そう」という声が出てきました。そこで、満留さんたちと一緒になって3カ月ほどかけてプロトタイプを作り、一通りのベース機能を揃えてデモを行いました。。その後はそのプロトタイプを拡張していき、様々な拠点での実証実験を通して機能を向上させ、安定させていきました。

プロトタイプのデモ走行@テストコース

ロボットタクシーの実証実験@新宿

伊勢 そのリアーキテクチャのプロジェクトって、少数精鋭で集中して開発していた記憶がありますね。

満留 南相馬での「合宿」のことですね。実験場以外に何もないところで、皆でがっつり実験した後、皆で温泉に入って(笑)。いかにも学生時代の合宿のような感覚だったことを覚えています。

コロナが始まってからの入社

伊勢 その後2021年に入社されたのが、Maxime(マキシム)さん、三浦さん、太田さん。オフィスが本郷から品川に移転した頃ですね。リモートワーク中心の働き方にシフトする中、みなさんはどういう経験を経てティアフォーに入社されましたか?

Maxime もともと別のロボット系スタートアップの自動運転部門で働いていました。

ティアフォーは競合なので元から知っていたのですが、同僚がティアフォーに移籍したことをきっかけに興味を持つようになりました。その後自分もアプライして、研究のポジションで入ったのですが、今はOSS活動と社外プロジェクト向けの開発を担当しています。

ジョインしたときはコロナ禍まっただ中。満留さんとずっと一緒に働いてましたが、全く顔を合わせませんでした。少し不思議でしたね。そういった状況でしたが、概ねスムーズに仕事を始められたと思います。

伊勢 なるほど。Maximeさんはアカデミアでの経験もお持ちですが、入った時のティアフォーは大学と企業、どちらに近いと思いました?

Maxime 会社ですね。ただ自分の場合は業務によって違います。OSSに関する業務では研究機関とのコラボレーションもあり、内容によってはアカデミアっぽい雰囲気を感じます。一方で社内向けの仕事は、顧客のいるプロジェクト志向なので会社っぽさが強いです。

太田 私は新卒入社なのですが、自宅にいきなりハイスペックなノートPCがドン!と届いて「さすが勢いのある会社だな」という第一印象を受けましたね(笑)。

カッチリした研修などがない点では、大企業とは違うなっていう感じがしました。Autowareを触った経験が無かった上、ドキュメントの整備が課題となっていた時期なので、学ぶのに苦戦した部分もありました。でも、上司を筆頭に周りのチームメンバーが手厚くサポートしてくださったおかげで早期に理解を深めることができました。

三浦 自動車メーカーで1年勤務した後、入社しました。PCが自宅に届き、最初の1週間ほど簡単な研修を受け、その後はすぐ仕事を始められました。上長がリモートの環境構築のサポートをしっかりしてくれた上、2週間ほぼ毎日話をして、密なコミュニケーションが取れたのでスムーズに仕事に慣れることができ、とてもよかったです。

伊勢 三浦さんは前職の自動車メーカーでも自動運転に関わっていたんですよね。

三浦 自動駐車の機能開発を担当していました。そこで使っていたソフトウェアは取り扱う人も少なく、「わかる人にしかわからない」という感じでしたが、私が入社した時のAutowareはOSSだけに多くの人が理解しやすいような工夫が多くされているな、と思いました。

伊勢 「秘伝のソース」からの大きな進化を感じますね。ではつづいて、2022年入社のみなさんにお話を聞いていきます。増資やGI基金採択と、ティアフォーにとって変化の大きい年、そんな2022年入社の籔内さんですが、以前はパートタイマーとして働いてたとか。

ティアフォー、GI基金採択とシリーズB資金調達 総額400億円規模の自動運転ソフトウェア開発推進とリファレンスデザイン提供へ

籔内 修士に入った頃から、「マップフォー」(※自動運転向けの3次元地図開発を手がけるグループ企業)で働いていました。

伊勢 パートタイマーのときと正社員になってからで、Autowareやティアフォーの見え方に違いはありましたか。

籔内 入社以前はAutowareを触ったことがなく、YouTubeやTwitterのデモンストレーション動画を見て「こんなことができるんだな」程度の認識でした。でも「動いてはいるけど、デモだしな。いいところだけ切り取ってるんじゃないかな」とちょっと思ってましたね。

入社して初めてAutowareのコードを見たり動かしたりしてみると、物体検知ができていて障害物を避けることもできていて、「本当に動くんだな」と驚き、「西新宿の街を本当に走ってるんだ」と感動しました。

様々な走行環境での無人走行

伊勢 見るのと自分の手で動かすのはやっぱり違いますよね。李さんは、2022年8月入社。数カ月前ですね。入社前のティアフォーはどう見えていましたか。

学科や研究室の系統がちょっと近かったので実は大学院生の頃から知っていました。Autowareの内容についてもざっくりとは把握していましたが、どちらかというと情報系の学生を「きちんと給与を出して雇って」自動運転の開発をしている、ところが印象的でよく覚えていたりします(笑)。

入社後、社内外のドキュメンテーションが充実しているのが印象的でした。OSSのドキュメントを読めば、割と素直に環境設定ができるし、わからないことがあってもConfluenceの社内のページにトラブルシューティングのノウハウがあるので、調べればたいていの問題は解決できるのは良かったです。

より良い自動運転プラットフォームを目指して

伊勢 ここからはAutowareの「現在地」に目を向けてみたいと思います。

満留さん、4年前と比較しての現在をどう捉えていますか。

満留 より広く使われやすいものになったんじゃないかと思っています。The Autoware Foundationのメンバーからもそれ以外の人たちからも、いろいろな質問や意見が飛んでくる。まだまだ課題もあるけれど、間違いなく前進している手応えはあります。

三宅 プラットフォームとしての成熟度は上がってきましたよね。個々の機能で見ると成長が遅いように見えるかもしれませんが、様々な経験を通してソフトウェア構成やコミュニティ運営を改善してきて、オープンソースの力を活用して開発をスケールさせる準備ができてきたかな、と感じています。

満留 ティアフォーの共通のプラットフォームとしたCI/CDも良くなってきました。「シナリオをしっかり用意して、各プロダクトチームの負担を減らそう」「それをオープンソースとしても提供できるといいよね」という方向性で進めています。

伊勢 開発の基礎が固まってきた、という印象ですね。利用者の視点からも聞いてみましょう。太田さん、三浦さん、李さんは今のAutowareを自動運転システム開発に使っていますよね。今のAutowareで「これがやりやすい」とか「もっとこうしたい」ポイントはありますか。

三浦 やりやすい面でいうと、ハードウェアの構成や性能に合わせて機能を取捨選択できてすごく使いやすい。例えば経路計画の各モジュールがPerceptionの動物体認識ベースで動くもの・点群だけで動くもの、というように分かれていたりします。

一方、改善したい点もあります。現状の動物体ベースの経路計画機能では、GPUを使った動物体認識が前提となっており、GPUなしのコンピュータだと欲しい機能が使えないことがあります。多様なハードウェア構成に対応するため、今後改善していく必要があるのかなと思ってます。

太田 私は自動運転バス向けのインテグレーションの自動運転インテグレーションを担当していたんですが、Autowareの優れている点は、ニーズに応じて必要な機能を選択して使用できる点ですね。多くの機能がなるべく依存しあわないように設計されており「あの機能を立ち上げたらこの機能も立ち上げなきゃいけない」みたいな制約が少ないところはインテグレーションする車両に必要十分な機能を搭載する上でとても役立ちました。ただ、そのようなモジュール性を意識したからこそ現状達成できないユースケースも出てきている。そこは、進化の余地があると思います。

Sensing/PerceptionモジュールではGPUを使う所謂Deepな手法と非Deepな手法の双方をサポートしていて様々な入力を利用して物体追跡ができるようになっています。現時点ではそこそこの推定精度になっているかと思いますが、一部機能の精度に割と依存していたり機能同士の組み合わせが悪さをしたりするケースもあったりします。

個々の機能の改善だけでなく近年のトレンドに合わせてー例えば複数のセンサ入力を1つの大きなモデルに入力して一度に処理するなどー構成そのものにも手を入れる余地があるのかなと思います。

次回・中編では「OSSの魅力」について語ります。

ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。

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