ティアフォーの自動運転技術を支える最先端の研究開発

連載企画「TIER IV PEOPLE」は、志をともにする個性豊かで魅力的なメンバー一人ひとりに焦点を当てて紹介します。

今回は社内の研究開発(Research & Development:R&D)の活動をリードし、海外での研究の促進やグローバルエコシステムにおけるパートナーとの連携をサポートするSimon Thompsonが、会社や仕事への思いを語ります。

Simon Thompson | R&D Team, Engineering Director

ーこれまでの経歴とティアフォー、AWF、MIHでの役割を教えてください

ティアフォーでは研究チームのリーダーを務め、国内外問わず大学や企業と多くのプロジェクトを進めています。また、ティアフォーのプロダクトの活用に関わる研究も行っています。The Autoware Foundation(AWF)では、国内外の大学が集まるAutoware Centre of Excellenceの運営委員のメンバーとして、研究用のプラットフォームとしても「Autoware」が普及するよう取り組んでいます。The MIH(Mobility In Harmony)Consortiumでは自動運転ワーキンググループでオープンな電気自動車(Electric vehicle:EV)の規格の構築に取り組んでいます。スマートフォンにおけるAndroidのように、今後グローバルスタンダードとなるEVのオープンプラットフォームを目指しています。

ーティアフォー入社のきっかけは?

公道での自動運転を実現したいと考え、ティアフォーに入社しました。入社前は産業技術総合研究所(AIST)で、室内向け小型ロボットから人型ロボット、大型建設車両まで、多岐にわたる自律ロボットの研究に携わってきました。研究自体は常に楽しいものでしたが、実証実験の段階から先に進むことが難しいと感じていました。ティアフォーで完全自動運転を実現し、製品化することは、研究成果を社会に広く普及させる絶好の機会だと思いました。

ー日本でロボットを開発するようになったきっかけは?

オーストラリア国立大学の博士課程在籍時に、日本との共同研究プロジェクトに参加していました。その際、日本を訪問するための研究奨学金を受けることができました。日本滞在中は様々な出会いがあり、博士号取得後に日本で仕事をしたいと自然に考えるようになりました。ご存じのとおり、日本はロボット工学に多額の投資をしており、高い技術を持っていることも理由の一つです。

ー日本で働き始めたときの印象を教えてください。

大学の研究環境に身を置いていたため、一般的な日本の労働環境に対する厳しいイメージはありませんでした。研究では常にアウトプットが重視され、自身の研究アイデアを追求するためのサポートと設備に恵まれていました。

ティアフォーの創業メンバーは世界に目を向けており、グローバルな協業経験も豊富です。加えて、ティアフォーのように研究成果を基に設立されたスタートアップ企業で働くことは、私にとって非常に居心地の良いものでした。世界最大級のテクノロジー・カンファレンスであるCESに毎年メンバーとして参加しており、ティアフォーの一員であることを誇りに思っています。


ー入社前のティアフォーとのつながりを詳しく教えてもらえますか? 

大学ではティアフォー創業者である加藤CEOと共に、「Autoware」の前身となる製品開発に携わっており、その頃から非常に良好な関係を築いています。その後、ティアフォーに研究部門が設立されると聞き、迷わずチームに加わることを決めました。

ーティアフォーで一緒に働かないかと誘われた時はどう思いましたか?

当時の私は、自身の研究成果が発表され、製品として社会に広く普及し、人々の生活に影響を与えることを目標とし、研究プロジェクトをどのように発展させれば良いのかを模索していました。

ティアフォーのビジョンは、他の企業とは異なり、利益を追求することだけを目的としていません。私たちはオープンソースに重点を置き、利益率よりもさらに大きな目標である自動運転の民主化を目指しています。まさしく私がやりたいことだと思いました。


ー「Autoware」の研究プロジェクトでは多くの企業が協業していたのですか?それとも個々で研究を進めていたのですか?

どちらもしており、両方とも重要であると考えています。ティアフォーは、「Autoware」と自動運転車両の実用化に関する豊富な知見を持っています。そのため、私たちはまず「Autowareに何が不足しているのか?」「Autowareの公道走行における直近の課題は何か?」という点を中心に研究を開始しました。

まず、大学と企業に知識を共有し、それぞれの研究を進めてもらい、その結果を「Autoware」にフィードバックしてもらうようにしました。より緊密な共同研究のためには、未解決の研究課題に取り組みながら、アプリケーションに焦点を当て、かつアウトプットが製品開発につながる明確な道筋を示す必要があります。

ーティアフォーに入社した時と今はどんな違いがありますか?

入社当初は、オフィスが今よりも狭く、少し窮屈に感じました。会社としては、事業の範囲が大きく変わりました。当時は、自動運転の基本的な機能を開発する実証実験に重点を置いており、私たちが参入しようとしていた市場は、主に日本国内向けのものでした。

それから、ティアフォーのプロダクトの成熟度が大幅に高まり、さまざまな運用設計領域(Operational Design Domain:ODD)向けに製品を定義するようになり、いくつかのプロダクトが世界に広がっています。

また、ティアフォーがターゲットとする市場規模も、国内市場から世界市場へと拡大しています。現在では、世界中の大学や企業との連携も増え、北米や中国に拠点を持つなど、会社の規模が大きくなっていることを実感します。


ーティアフォーの実績で誇りに思うところを教えてください。

やはり、AWFの発足が印象的です。大学発のプロジェクトだったため、当時はまだ研究レベルで、十分にテストされていないコードが多くありました。そのため、まず最初のステップとして、AWFのコードベースを厳密にテストし、洗練されたコードに変換しました。そして、自動駐車システムで最初のデモンストレーションを実施しました。

AWFの他のメンバーとチームを組み、コードを研究レベルから製品レベルへと引き上げ、実証実験を行いました。そして、北米で自動駐車のデモンストレーションを実施し、成功を収めることができました。このプロジェクトに参加できたことは、本当に素晴らしい経験でした。


ー他の自動運転に投資している組織とティアフォーの違いはなんだと思いますか?

大きな違いは、パートナー企業との協業とエコシステムの構築です。ティアフォーだけで全ての課題を解決することはできないため、他の組織と連携して解決策を模索する必要があります。大企業のように、一社で自動運転車両を作ろうとすると、非常に大きな投資が必要です。しかし、収益が見込めないまま投資を続けることは困難です。参入障壁を低くし、様々な企業と協業することには、関係者全員のリスクを軽減できるというメリットがあります。そして、多種多様なアイデアが集まることで、より良い解決策を見出すことができるのです。

ーMIHとは何ですか?また、ティアフォーとAWFとのかかわりは?

Foxconnが設立したMIHは、EV開発のオープンスタンダードを構築する団体であり、2,000社以上の企業が参加しています。

私たちは、MIH OpenEV KitがEV開発のデファクト・スタンダードとなることを目標に取り組んでいます。誰もが利用できるツールを開発することで参入障壁を下げ、世界中の様々な企業や団体がEV市場に参入できるようになるのです。

「Autoware」をオープンソースのプラットフォームとしてEVプラットフォームに提供することで、誰もが自分で自動運転の実証車両を作ることができるようになります。

「Autoware」をオープンなソフトウェアプラットフォームのスタンダードとすることができれば、「Autoware」の潜在市場を飛躍的に拡大できるのではないかと期待しています。このような標準化に関わることで、より効率的に潜在的な顧客の要件を把握し、適合させることができます。

CES 2023でのティアフォーとMIHの共同出展の様子

ーMIHとの協業について教えてください。

MIH Open EV Kitプロジェクトへの参加は、私たちにとって新たな挑戦です。まず、参加している様々な組織のメンバーでワーキンググループを結成し、EVプラットフォームに関連する多岐にわたる分野のメンバーと共にプロジェクトを進めています。

TIER IV North America のChristian Johnは、MIHの自動運転ワーキンググループのリーダーを務めています。その他にも、コックピット、情報、テレマティクス、電子機器、電子アーキテクチャなど、車両に関わる様々な分野のグループがあります。私自身は、センサーAPIワーキンググループというサブグループのリーダーを務めています。車両に搭載された様々なセンサーから情報を取得し、その情報を自動運転システムまたは先進運転支援システムに送るための、あらゆるインターフェースの定義を行っています。メンバーをまとめながら、センサーが車両の他の部分と円滑に連携できるように、センサーのオープンスタンダードを定義しています。

ーティアフォーとMIHの今後の協業関係をどのように考えていますか?

現在は、EVのオープンスタンダードの構築に向けて協業を続けています。EVをベースに、ステアリングやアクセル操作を伝えるドライブ・バイ・ワイヤの標準規格を最初に提案したのも、私たちです。今はセンサーAPIに取り組んでいますが、自動運転開発に関する完全な定義ができるまで、自動運転ソリューションの様々な分野に取り組むつもりです。EV市場への参入に向けた最初の試みとして、Project Xという車両が販売されます。

Project Xは、MIHがEV市場向けに初めて発売する車両であり、モジュールでの組み立て式で拡張可能な仕様となっています。

現在、MIH車両と「Autoware」をパッケージ化し、ティアフォーや他のMIHのパートナーが市場に投入できるようにするための様々な方法を模索している最中です。

ー協業の課題はありますか?

様々なパートナーからなる大規模なコンソーシアムであるため、言葉や文化の違いも多くあります。多様なソリューションが存在する中で、全員が単一の規格を定義しようとする場合、全ての異なる視点に耳を傾け、意見を収集し、何が最も重要かを定義するために、合意形成を図りながら一歩ずつ進むことが重要となります。

例えば、ある自律機能に対し、オープンスタンダードを通じてどのように対応するか、一方で、自身のソリューションをより良い方向に進めたいと考えている様々なメンバーの利害をどのように調整するかが課題ですね。

ーこの大きな協業を一言で表すと?

非常に刺激的です。多くの可動部品を組み合わせる必要があり、自動運転には未知の部分が多くあります。そのような課題に直面した時、それに関連するあらゆること、そしてその解決策を見出す作業は、大変ですがやりがいがあります。

ー自動運転車両に不安を感じている一般の人々に伝えたいことはありますか?

私も不安を感じていた一人でした!自動車が完全に自動運転になり、乗用車に取って代わるのは、まだ少し先の話でしょう。技術を段階的に導入し展開していくには、このような中間段階を経る必要があるということを、業界全体が学んでいる状況ですね。

そうやって徐々に進めていくことで、社会全体の自動運転車両に対する信頼を高める機会になります。例えば、配達は自律走行ロボットを使って一定の距離でモノを運び、その後、大型車両に積み替えるといった段階的な進歩があるでしょう。日本では最近、名古屋と東京間の高速道路の一部に自動運転トラック専用レーンを設けるという発表がありました。このように、市民の信頼を得るためには、一歩一歩着実に進めていくことが必要です。

ーティアフォーにはどんな人が合うと思いますか?

研究面でいうと、生まれつき探究心が旺盛な人や、与えられた領域で専門知識を得るために専念できる人がいいですね。

業界が常に進化しているので、「自分の意見を言える人」が必要です。自分の意見をしっかり持ち、建設的に議論できる人がいいですね。

ティアフォーのように異なる言語や文化が入り混じった環境では、特にこのような絶妙なバランス感覚が必要になります。技術的好奇心と、グローバルなメンバーと協働するための成熟度を兼ね備えていることが、本当に重要なことだと思います。

ーティアフォーのコミュニケーションではどのようなチームワークが見られますか?

コミュニケーションは活発です。様々な分野の人々が集まっているため、多くのコミュニケーションを取っています。ティアフォーの良い点でもあり、課題でもありますが、様々なチームや専門家がいて、多岐にわたる要素をカバーしているため、単独で仕事をすることはできません。それぞれの仕事は、他の全ての部署に直接影響を与えるため、常にコミュニケーションを取る必要があります。

各チームがそれぞれの役割を果たすために必要な情報にアクセスできるよう、明確なコミュニケーションの枠組みを設計する必要があります。アイディアや活動の内容は、常に共有されていると言えますね。

ー同僚にはどのような事を期待しますか?

真面目さと誠実さを持ち、情熱的に仕事に取り組んでいただける方をお待ちしています。


ー現メンバーやこれから仲間になってくれる方にメッセージはありますか?

ティアフォーは、社会に大きな変化とポジティブな影響をもたらす多くの可能性を秘めています。現在は、スタートアップから収益性の高い企業へと成長する過渡期にあります。最先端の技術を追求する分野であるため、全てのチームとメンバーにとって多くの挑戦と機会があると思います。社会に大きな変化を起こしたいという意欲と情熱を持っている方にとって、ティアフォーは最適な会社だと思います。

・・・

ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。

その他にも多くの職種で採用をしています。詳細は、ティアフォーの「求人ページ」をご覧ください。

「どの職種で自分の経験を活かせるかが分からない」「希望する職種が見つからない」などの場合は、ぜひ「キャリア登録」をお願いします。

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