国内初!公道でのレベル4認可取得・1チームで達成した軌跡に迫る

2023年10月、ティアフォーは、GLP ALFALINK相模原で開発・運用していた自動運転システム「AIパイロット」に対して、道路運送車両法に基づき、運転者を必要としない自動運転システム「レベル4*」の認可を取得しました。今回はレベル4認可を取得したAIパイロットの評価と開発をリードするメンバーがLevel4取得までの道のりで起きたエピソードや今後の展望について語りました。

*レベル4:特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
Yuki Iida / Product Owner TIERIV

立命館大学大学院・情報理工学研究科卒業。ティアフォーではProduct Ownerを務める。前職では自動運転向けの運行管理システムを開発。

Shinnosuke Hirakawa

Shinnosuke Hirakawa / System Integration Team

東京大学大学院・情報理工学系研究科卒業。ティアフォーでは自動運転バスの開発リードを担当。前職では医療機器向けの画像認識技術のR&Dを担当。

Daisuke Takano

Daisuke Takano / Design & Test Team

筑波大学・Computer Science専攻。ティアフォーではプロダクト開発の要件定義と評価をリード。  前職では組込みエンジニアやADAS開発エンジニアを担当。 

ーお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、「レベル4の認可取得までの道のりで起きた困難を聞かせてください。


飯田:まず「レベル4の認可ってどうやればとれるの?」っていう指標がないというところが難しかったですね。プロセスも開示されていない状態で、扉をたたきに行ったので。何を満たせばゴールなのかがわからなかったので、そのプロセスを学ぶことが第一目標でした。レベル4の要件って、「保安基準を満たす」とあるのですが、その保安基準が結構曖昧に書かれていて。例えば「他者の進路を妨げない」とあった場合、これには「飛び出し歩行者まで対応する」なども含まれていて、「じゃあ飛び出し歩行者の速度は何キロまで考えるのか」とか、「他者の進路妨害ってどこまでが進路妨害なの?」といった基準がない中での提案になっていくので、そこがやはり難しかったです。

平川:すべてが困難だったとも言えますが・・・自動走行車公道実証ワーキング・グループ(WG)の有識者会議を何回か経ていく過程で追加で「これが必要なんじゃないか?」という指摘が毎回出てきて、微修正ですまないものも多く、新しく作らなくてはいけなかったのが大変でした。

飯田:指摘への修正ですね。修正した部分が実はいらなかった・・みたいなことも含め色々ありました。

高野:僕は第三者評価のところがきつかったですね。どういうことをやればいいのかとか、段取りが全くない状態で一からやらなければいけないのが大変だったなと思ってます。自分たちで計画して試験するというのは前職でも経験があったので、内容自体はさほど難しいものではなかったのですが、他の企業にやってもらうっていうのは大変だなと思いました。事務処理から何から何まで (笑)。

ー第三者評価とは?

飯田:レベル4の認可は国交省が事前に審査するんですが、国交省の担当者は技術者ではないので判断が難しく大学の先生など有識者を集めて審査を行います。そこで自動運転車両の設計、仕様や評価計画が問題なしとなると、審議完了となります。後は評価を実施し、運輸局に書類を提出し認可完了となります。審査時に提出した評価計画を元に評価を行う際に、第三者評価機関の立ち会い等が必要となり、今回でいうとJARI(日本自動車研究所)が担当してくださいました。この評価全般を高野さんが担当してくれていました。

レベル4認可の取得に至ったGLP ALFALINK相模原の
走行環境と自動運転バス車両

高野:運輸局の指摘が細かかったですね。

飯田:そうですね。運輸局にこの車は自動運転機能付きですという認可をもらう必要があります。最後に書類を受理するのが運輸局なのですが、ここで厳しいチェックが入りました。

平川:第三者評価が終わった後の最後の一山でしたね。あとは夜走らせに行ったりとか。

高野:夜間というシチュエーションは走行する対象ではなかったんですが、必要になってしまって夜間でも大丈夫だというエビデンスをGLP ALFALINK相模原に取りに行きました。暗い中で照度計を持ちながら照度を評価して (笑)。

飯田:GLPは24時間開いていて理想的な環境でしたね。

GLP ALFALINK相模原構内の循環経路

ーチームでどのように困難を乗り越えましたか?

平川:メカトロや色々なチームがクイックに動いてくれました。

飯田:ティアフォーの強みの一つはいろんなドメインの人が一手に集まっていて、ワンチームであることです。

平川:確かにそうですね、コンパクトにまとまって動けたと思います。センサなど新しく追加する場合はメカトロチームに手伝ってもらい、設計上これで本当にいいのかという部分を安全を考えているチームに相談して実装したり。またそのテストをしなければいけないので、テスト項目を作ってもらったりというサイクルを短い期間と少人数でガーっと回した感じですね。

飯田:これはティアフォーの特色じゃないですかね。大企業は縦割りとなっているところが多いので、なかなか各要素技術の人がこれだけ短いスパンで解決策を見出すのはないんじゃないかと。これはベンチャーあるあるですね。

高野:僕は、チームのメンバーたちがそれぞれすごく頑張ってくれたのが大きいですね。チームリーダーという立場であまり自分で手を動かせなかったので、詳細な検討や資料整理はチームのメンバーにやってもらいました。試験条件や開発評価の結果については平川さんのチームにヒアリングしながらまとめられたので、その辺はすごくやりやすかったです。ただ実際に評価が始まるとやっぱり動かない部分が出てきて。そんな時も、平川さんのチームが現場やリモートでサポートしてもらえて、評価実施についてもチーム間でうまく連携して進められたと思います。

飯田:パートナー企業の株式会社ベリサーブにも手伝ってってもらいましたね。パートナー企業との連携力もティアフォーの強みなので。先日プレスリリースを出したL4 V&Vというソリューションも、今回のノウハウを活かして、パートナーと進めるビジネスになります。

包括的な評価ツールキットの提供。DevOps Solution, L4 V&V

高野:パートナーとの協業の土台作りをしていたというところですね。ベリサーブは評価設計の人材派遣が強みなんですが、GLPレベル4の認可取得時のJARIにお願いしている評価のサポートをしていただきました。今はティアフォーだけですけど、ほかの企業から来た時もベリサーブで受けてもらえるようにしていくという事もやっています。

ーティアフォー案件でなくても、ベリサーブにノウハウが蓄積されるように主導していると。

飯田:そうですね。ティアフォーのプロダクトを使って他社の方が新しいビジネスができると嬉しいです。このレベル4の認可を通してビジネスチャンスになる部分の模索と、エコシステム作りも目標の1つとして進めていました。チームで乗り越えたことでいうと・・要件がわからない中でやってきてはいるんですけど、適宜言われたことに対して各分野のスペシャリストがいるので、そこのスキルの多様性をチームとしての強みとしてやりきりましたね。あと技術的なところではないんですけど、GR(政府渉外)チームが強い事にも助けられました。ティアフォーは自動運転を普及させる民主化をビジョンとして掲げています。今回培ったプロセスもドキュメントとして公開していますし、Meetupなども行っておりますのでそこで見ていただければと思います。

ー今回の認可取得で得た教訓はありますか?

平川:政府や他企業が関わっている中でスケジュールを全部決めるっていうのは難しかったですね。今回のスケジュールですが、結局予定より1年弱延びましたからね。例えばそれがコースの確保だったり、あるいはワーキング・グループでいろんな指摘事項に対応する時間が必要だったり。そういうのを踏まえて、次はきちんと予定された時期に出せるように、スケジュールを組むようにしています。

飯田:遅れた最大の理由が、車両ができないという・・でもある意味では成長痛じゃないですが、この痛みのおかげでまたビジネスが広がったんですよね。今回のレベル4を取ったことによって先ほどのL4 V&V以外にも、「ファンファーレ」というソリューションが生まれました。ティアフォーはソフトウェアの会社なので車を作る気はなかったんですけど、レベル4の要件を満たせる車がなく、作らざるを得なくなってしまって。各OEMやTIER1サプライヤにあたって、最後は車両制御側のソフトもこちら側で開発して、いつの間にか車を作ってました (笑)。設計評価系のノウハウはL4V&V、車両の製造ノウハウはファンファーレにつながってます。

ファンファーレのホワイトレーベルEV 

高野:今後の教訓としては、レベル4認可取得のために必要な評価項目はある程度テンプレート化できそうなので、評価項目や手順のベースラインを作ればさらに効率化できそうだなと思っています。ベースラインができれば、そこに対して変化点だけ書いていけばいいので、評価に関するノウハウは使いまわせると思ってます。

飯田:あとはスケジュールですね。第三者評価って、お金払ってテストコースと人員を押さえてやってるんですよ。計画通りいかないとどんどんコスト上がるし、そもそもJARIっていろんなOEMから試験を受けるようなところなんで、スケジュールが埋まっていくんですよね。

高野:なんとかギリギリ収まりました。

ー相模原を踏まえて、次はどのような場所で認可取得を目指していますか?

飯田:塩尻です!今塩尻のレベル4認可に向けて諸々進めています。

塩尻駅前を走行するティアフォー新型EVバス

高野:差分でできるっていうプロセスができると結構加速するかなとは思います。ベースの車両は一緒、ODD(Operational Design Domain)もほとんど一緒か、もしくは前に設定したものよりも簡単なODD・・ってなると、前回分をそのまま使えるので、そこの部分は簡単になるのかなと思います。懸念しているのは公道走行ワーキングの認可の前のプロセスのところですね。運輸局に申請がいっぱい来たらどうするんですかね。

飯田:前提ができれば右から左にいけるとは思いますが。

高野:先ほどの話にもありましたが、GLPの時は第三者評価の実施だけで3週間くらいかかったんですよね。じゃあ50カ所*っていうと×50になりますが、それは無理なので、差分のみ評価で認可取得できるようなプロセスにするっていうのが大切なのかなと思います。一回の審議に複数箇所持っていくとかもありなのかなと思います。

*日本政府が2025年度中に50カ所での無人自動運転移動サービスの実現という目標設定。

飯田:これは国交省マターだと思うんですけど、国交省の方も一応その認可をいかにスピーディーにするかは検討中らしいというところですね。

写真左から平川、高野、飯田 — 品川オフィスにて

ー今後ティアフォーでのレベル4認可を加速させていくにはチームの強化が必要になります。どのような人がティアフォーで活躍できるのか、どのような人と一緒に働きたいかを教えてください。

平川:自動運転には色々な要素があり、考えなきゃいけないこととやらなければいけないことがたくさんあります。特定ジャンルに限らず、何でも積極的に手を付けてくれるような方に入っていただけるといいですよね。

高野:現在、安全設計・評価できる人が少ないので、安全設計含めて手を動かせる方をとても求めています。特に、Requirement engineerが少ないので、強化したいなと思ってます。自身のドメインを超えて自分でタスクを取りに行ってくれるような人とかがいると、僕としてはすごいマネージメントしやすいなと思ってます。要件とテスト、一緒にできるエンジニアの方に来ていただけると嬉しいです。

飯田:結局どこのドメインもウェルカムです。自分で枠を狭めず、本当に安全で使える車を作ろうと思った時に、目的に対して何をやるべきか、目的ベースで動ける熱いパッションのある人が欲しいです。

・・・

ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。

今回のチームで募集中の職種


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2024年1月9日から12日まで米国ネバダ州ラスベガスで開催されるCES 2024にて、自動運転の商用ソフトウェアプラットフォームやソリューションの展示とデモを行います!ティアフォーが開発する最先端の自動運転の技術を通して、未来のモビリティを感じていただけます。CESに行かれる方は、ぜひティアフォーのブースへお越しください!ティアフォーのCES 2024への出展について、詳しくはこちらをご覧ください。

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CES2024 TIER IV

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